2016年2月28日 (日)

「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」について

日本公認会計士協会から平成28 年1月27 日付けで「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」という会長通牒が発せられている(会長通牒平成28 年第1号)。
 https://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/files/0-99-0-2-20160127.pdf
 

「監査人は、資本市場の健全な発展に寄与すべく、監査の実施に当たっては厳正な態度で臨まなければならない。昨今の度重なる会計不祥事は監査の信頼を揺るがすものであり、公認会計士監査の信頼回復のため、会員各位には下記の点について特に留意し、真摯に監査業務に取り組むことを強く要請する。」として、「リスク・アプローチに基づく監査」「職業的専門家としての懐疑心」「経営者による内部統制を無効化するリスク」「会計上の見積りの監査」「監査チーム内の情報共有」「審査」「監査時間・期間の確保」の7点を挙げる。

 これらの点は、いわばミクロ的な原理原則の繰り返しであって、「昨今の度重なる会計不祥事」がこれらの原理原則を遵守できなかったことへの解決策となるわけではなかろう。協会としては、原理原則を遵守していれば、不祥事は防げるというメッセージを会員に伝達することの意味はあるが、根本的な問題解決の提言にはならない。問題は、統制環境にあるのであって、どうすれば問題解決になるのかを少し考えてみたい。

重要なポイントは、次の4点である。

 
1.クライアントとのコミュニケーション力
 
 特に監査チームの現場では、クライアントと膝を突き合わせて、会計事象の分析・対応、会計基準の適用の検討などを行うのであり、最も現場に近い会計士はクライアントとのコミュニケーションに第一次的な重大な責任を負う。この現場では、「重要性の基準」ではなく、軽微な現象も見逃してはならないというミッションを担っていると意識するのが適切である。クライアントに対する説得力もコミュニケーションができているかどうかで決まってくる。説得的な理由も告げられず、理論的・実務的な議論もできず、形式を適用しようとする強引さは避けるべきである。昨今の会計不祥事により、準則主義を過度に強調するきらいがあるが、「なぜその基準を当該事象に適用してそのようにしなければならないのか。」という実質を説明できなければ、逆に不信感を生じさせることになる。

 
2.業務の透明性。チーム内、監査法人内の担当を超えた情報の共有力と意見交換力
 
 組織が硬直化している、また、チームのトップが強引であったり、判断が遅いとなると、重要な情報の共有および重要な事象の議論がおろそかになることは容易に想像できる。チーム力を上げ、チームがどのように動いているかを監査法人の組織内で把握できるようにしておかなければ、品質維持・向上のための監視機能が働かない。

 
3.豹変力
 
 「君子は豹変する」という本来の意味での「豹変」である。すなわち、誤りを誤りと認めて過去を引きずらずに正しい方向性を示す力のことである。小さな見逃しが高じて大きな不祥事に至ることはしばしば経験する。「監査人は強い態度で監査業務に臨むことが必要である。」(上記会長通牒)といっても「強い態度」に出られない事情があるのであって、これでは解決にはならない。「豹変してもかまわない。今後クライアントのためにならない場合には、躊躇することなく豹変すべきである。」と背中を押すべきではないか。「毎期、全く新たに監査を引き受けるとしたらどうするかというスタンスで監査に臨み、過去の監査をリセットせよ。」といいかえてもよい。

 
4.精神的な独立性
 
 監査人は、客観的な独立性のみならず「精神的な独立性」を有すべきであり、やはりここの弱さが問題を引き起こしている大きな要因である気がする。「クライアントの真の利益のために正面から誠実に考える姿勢」があれば、何を憚ることがあるのか。精神的な独立性は、このような職務に取り組む真摯な姿勢から生じるものであり、クライアントの尊敬を勝ち取らなければ、真の独立性は得られない。

監査人は、問題の本質を、大きな統制環境の枠組みからとらえるべきであり、また、クライアントと真の信頼関係を築き、クライアントの利益が株主その他のステークホルダーの利益と一致するという信念をもって、職務を遂行していただきたい。

弁護士 出澤秀二

 

2015年11月10日 (火)

省令案要項~女性活躍推進法

 

828日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立しました。同法では、労働者300人を超える企業には、自社の女性の活躍状況の把握、課題分析、「一般事業主行動計画」の策定・届出、情報公開等を行うことが義務付けられます。


 
この度、企業が義務付けられる事項の具体的な内容を定める省令案の要項について、厚生労働大臣から、労働政策審議会に対して諮問がなされ、同審議会から厚生労働大臣に答申が行われました。これにより、事業主がどのような事項を把握し、公表すべきかが明らかになりました。


 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000100073.html


 
省令案要項の主な内容は、以下のとおりです。


(1)
 女性の職業生活における活躍に関する状況の把握

 事業主が一般事業主行動計画を策定又は変更するときに把握する事項について、


①必ず把握すべき項目(「必須把握項目」)として、以下の4項目

・採用した労働者に占める女性労働者の割合

・男女の平均勤続年数の差異

・各月ごとの労働者の平均残業時間等の労働時間

・管理職に占める女性労働者の割合の4項目を、


②必要に応じ把握する項目(「任意把握項目」)として、男女別の採用における競争倍率、女性労働者の割合、男女別の配置状況等の21項目を定める。


(2)
 一般事業主の認定の方法等

認定基準について、①女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準、②その他の基準を定め、さらに実績に係る基準を満たす項目の個数に応じて、認定を3段階に設定する。


(3)
 一般事業主による女性の職業選択に資する情報の公表

事業主が選択して行う情報の公表の項目として、以下の14項目を定める。

①採用した労働者に占める女性労働者の割合

②男女別の採用における競争倍率

③女性労働者の割合

男女の平均継続勤務年数の差異

⑤男女別の継続雇用割合

⑥男女別の育児休業取得率

⑦労働者1人当たりの時間外労働及び休日労働の1月あたりの合計時間数

⑧雇用管理区分ごとの労働者1人当たりの時間外労働及び休日労働の1月当たりの合計時間数

⑨有給休暇取得率

⑩係長級にある者に占める女性労働者の割合

⑪管理職に占める女性労働者の割合

⑫役員に占める女性の割合

⑬男女別の職種の転換又は雇用形態の転換及び派遣労働者の男女別の雇入れの実績

⑭男女別の再雇用または中途採用の実績


 
実施を義務付けられる労働者300人を超える企業は、2016 4 1 日までに、自社の女性の活躍状況の把握、課題分析、「一般事業主行動計画」の策定・届出、情報公開等を行う必要がありますので、今から準備を進めておくようにしてください。


 
弁護士 丸野 登紀子

2015年10月21日 (水)

データ移転に関するEU・米国間のセーフハーバー協定無効判決

欧州司法裁判所(ECJ)は、2015106日、データ移転に関するEU・米国間のセーフハーバー協定が無効である旨の判決を下しました。

http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2015-10/cp150117en.pdf


EU
データ保護指令(95/46/EC)のもとでは、個人データのEU外の第三国への移転は、原則として、当該第三国において「十分なレベルの保護措置」が確保されている旨の欧州委員会による認定(十分性認定)がある場合に限って、行うことができます。そして、米国や日本はこの認定を受けていません。


 
他方で、EU・米国間では2000年に「セーフハーバー協定」が合意され、EUから米国へのデータ移転に関しては、特例措置が設けられています。これは、一定の原則を遵守する旨を表明し、米国商務省の認証を受けた企業については、データ移転について「十分なレベルの保護措置」が確保されているものと認める取扱いをするものです。これまで、FacebookGoogleなど多くの米国企業が、このセーフハーバースキームに依拠して、EU・米国間のデータ移転を行ってきました。


 
本判決の事案は、エドワード・スノーデン事件により、米国政府機関(NSA等)による企業等の情報監視の事実が発覚したことを受け、オーストリアのFacebookユーザーが、米国の保護措置の十分性に疑義があるとして、アイルランドの当局に申立てを行ったことを契機とするものです。


ECJ
は、米国の保護措置が不十分であると認め、結論として、EU・米国間のセーフハーバー協定は無効であると判断しました。

http://curia.europa.eu/juris/documents.jsf?num=C-362/14


 
本判決については、セーフハーバースキームに依拠してきた米国企業への重大な影響に鑑み、EU・米国間で早期に何らかの決着が図られる可能性もありますが、関係する企業、政府等が今後迫られる対応を考えると、本判決がもつインパクトは大きいと考えられます。現行のEUデータ保護指令に関しては、これに代わる新たな規制枠組みである「一般データ保護規則」の制定に向けた作業が現在進行中ですが、当該作業にも影響を及ぼす可能性があります。


 
日本との関係では、わが国でも、米国の例にならい、EUとの間で(日本版)セーフハーバー協定を締結してはどうかという意見がありますが、本判決によりその実現は困難になるかもしれません。先日出席した弁護士会のセミナーでも、そうした議論が出ていました。


 
日本では、20159月、改正個人情報保護法が成立しました。改正後の日本の法制度が今後EUの十分性認定を受けるか否かは、EU内で事業を展開する日本企業にとって重要な意味をもちます。この点に関する今後の動向にも注目しています。


 
弁護士 大賀祥大

2015年10月12日 (月)

セミナー:民法・特許法等の法文から考える契約書審査・作成講座《基礎編》

あたらしい契約法のセミナーを行います。


特許発明実施権許諾契約と共同研究開発契約を題材にし、民法や特許法などの法文が契約条項の作成・解釈にどのような基礎を提供しているのかという観点を踏まえて、契約書の審査・作成のポイントを解説します。


 
民法(債権法)を体系的に学習したことのない、又は契約条項にどのように法文が影響するのかの理解を深めたいという、実務で契約書(特に上記契約類型)を審査する立場にある、知的財産部、法務部、総務部の担当者等を対象とした基礎的講座です。


 
これまでの契約法講座と一部の内容が重複していますのであらかじめご了承ください。


 
日時: 平成27年12月3日(木)午後2時00分~午後5時00分

会場: 金融財務研究会本社 グリンヒルビル セミナールーム

(東京都中央区日本橋茅場町1-10-8

http://www.kinyu.co.jp/cgi/seminar/272265.html


 
以下は、項目です。

1 契約の基本構造-成立、効力発生、履行、消滅

1 総論

2 契約書の作成、検討、審査の基本

3 契約の成立

(1) 契約の成立

(2) 主張責任・立証責任

(3) 法的強制力が生じる合意と生じない合意

4 効力の発生

(1) 効力発生要件

(2) 効力発生障害事由

(3) 契約解釈の指針

5 契約の履行

(1) 債務の本旨に従った弁済

(2) 権利行使阻止事由

6 契約の終了と効力の消滅

7 ポイントとなる条項

(1) 瑕疵担保責任

(2) 損害賠償

2 特許発明実施権許諾契約と共同研究開発契約

1 知的財産権

(1) 概念の整理

(2) 権利保証の性質

(3) 秘密保持義務

2 実施権許諾契約

(1) 概要とポイント

(2) 実施権許諾契約の条項

3 共同研究開発契約

(1) 概要とポイント

(2) 共同研究開発契約の条項

4 一般条項


 
初めて実施するセミナーで、連休中もレジュメを作成中ですが、興味をもっていただける内容になりそうです。


 
ところで、この1015日にも同所で「企業法務担当者、弁護士等専門家等のための、 契約書作成・チェック・審査上級講座(Part2)」のセミナーを実施します。

どうぞご参加ください(経営調査研究会での私の契約法講座の受講者は延べ250名を超えました。多くの方にご参加いただきありがとうございました。)。

http://www.kinyu.co.jp/cgi/seminar/271933.html


 
弁護士 出澤 秀二

2015年10月 4日 (日)

監査等委員会設置会社の話(5)

月刊監査役10月号に「監査等委員としての実務対応―監査役との違い―(上)」というパネルディスカッションの記事が掲載されていた。


 
「上」の今回は、「取締役会における意思決定への関与」が主なテーマである。


 
そうなると、論者の主張は、「社外取締役に求められる役割」に主眼を置くことになるが、読んでいて、「社外取締役が監査等委員でもある」のか、「監査等委員が社外取締役でもある」のか、現実問題として、会社としては、監査等委員に「社外取締役の役割」をどこまで求めるかかという基本的なスタンスを考えておく必要があるのではないかと感じた。

CGC
では、「独立社外取締役」は、「取締役会における議論に積極的に貢献」するという「攻め」の姿勢が求められている。

しかし監査の役割を担う機関は、いくら「守備範囲を過度に捉えることは適切ではない」(「監査役」の場合)といわれても、やはり基本は「守り」を完璧にすることが求められているのである。監査機関が「守り」をおろそかにすることは、会社を危険にさらすことであり(経営陣が安心して業務執行に従事できない)、また、自分自身の職務懈怠にもなる。


 
この「攻め」と「守り」を同時に使い分けることは、必ずしも容易なことではない。取締役会で審議される事項についても、「攻め」の姿勢は場合によっては、監査の「守り」の機能を希薄化させるおそれなしとしない(自己の「積極的意見」を述べた事項は、後日監査の対象としにくい)。


 一口に「独立社外取締役」といっても、複数いる場合の皆が皆、同じ役割を期待されているわけではなく(ここでも多様性が妥当する)、「社外(非常勤)監査等委員」には、「会社としては、監査機能の役割を特に期待する」というその期待する役割を明確化し、活動しやすい環境を作るのが、監査機能の充実を図るゆえんである。監査機能は、決して弱化してはならない。


弁護士 出澤 秀二

2015年10月 2日 (金)

フォローアップ会議に係る意見募集

金融庁が「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議に係る意見募集について」を公表し、「今後の会合において議論・検証されるべきと考えられる事項、その他コーポレートガバナンスの更なる充実等に関し、広く意見を募集」しています。

http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20150924-1.html


 
そこで早速、次の意見を送信しました。


 
1.今後の会合において議論・検証されるべきと考えられる事項


CGC
は、形だけ合わせるのでは意味はありません。CGCの内容は、あくまでも一般的に、企業価値を向上させるためにはどうすればよいかという「仮説」ですので、その仮説の検証を含め、真に自社に適した(自社の企業価値を向上させる)方策が求められています。


 
そこで、フォローアップ会議でも、単に各社の導入状況、実施・説明の分析にとどまることなく、CGC原則が「企業価値向上」という目的に効果的に寄与しているかどうかの検証をお願いしたいところです。


 
例えば、独立社外取締役2名以上というのが、従前の0名ないし1名の場合と比較して、どのように自社のCGの向上に貢献できている(と考えている)のかなどのアンケートを実施し、CGC原則の「仮説」を検証するという観点から、有益な検討、議論がされることを望みます。


 
2.コーポレートガバナンスの更なる充実


 
原則4-11は、監査役には財務・会計の知見のある者1名以上選任されるべきとありますが、上場会社の場合、会計監査人が監査を実施し、監査役は、その監査内容を定期的かつ適時に説明を受けますので、特に「財務・会計の知見」がなくてもその理解ができれば(通常、これができる監査役が選任されています)、特段の問題はありません。


 
むしろ、「法務の知見」の方が生かされる機会が多いのが、上場会社の監査役実務の実情だと思います。監査の際に法的判断を行うことはしばしば経験します。ただし、常勤監査役の場合は、会計監査人の対象としていない重要性の基準からはずれる事象や社内に常駐するところから認識する日々の経理関係事項について、財務・会計の知見が生かされていると感じています。


 
したがいまして、「非常勤社外監査役には法務の知見のある者1名以上選任」といった、「法務の知見」を生かす方向性をCGCに盛り込んでいただくと、上場会社のリスクテイキングの土俵を一層強固にできるものと考えます。


 
せっかくの意見募集ですので、皆様も機会をとらえて、ご自身の考えを提供されたらいかがでしょうか。


 
弁護士 出澤 秀二

2015年9月29日 (火)

コーポレートガバナンス・コードへの対応状況

「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況及び関連データ」が、2015924日付けで東京証券取引所から公表されています。


 http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20150924/04.pdf


 
この資料は「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(金融庁)の第1回会議で配布されたものです。

http://r26.smp.ne.jp/u/No/351473/j5m338g6gfgJ_2810/351473_150925014.html


CGC
は、6月1日から適用開始となりましたが、8月末までに111社が開示を済ませています。この資料は、そのうち基本原則・原則・補充原則(合計73原則)すべてが適用される市場1,2部の企業68社の開示内容を分析したものです。


CGC
は、「コンプライ(実施)又はエクスプレイン(説明)」ルールを適用していますが、全原則を実施している企業は、41社(60.3%)に及んでいます。


 
実施率の最も低い原則は、「補充原則4-11③」(取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価、結果の概要の開示)となっています(実施52社、説明16社。説明率23.5%)。


 
また、独立社外取締役が「2名以上選任」されている市場1部の企業は、2015年(729日公表資料)には、前年の21.5%から48.4%と倍以上になっており、選任の動きが加速している様子が見て取れます。


 
ところで、各社とも、CGCに形だけ合わせるのでは意味はありません(コストアップにすぎません)。CGCの内容は、あくまでも一般的に、企業価値を向上させる(コーポレートガバナンスを効かせる)ためにはどうすればよいかという「仮説」ですので、その仮説の検証を含め、真に自社に適した(自社の企業価値を向上させる)方策が求められています。


 
フォローアップ会議でも、単に各社の導入状況、実施・説明の分析にとどまることなく、CGC原則が「企業価値向上」という目的に効果的に寄与しているかどうかの検証が必要でしょう。CGC原則の「仮説」を検証する(例えば、独立社外取締役2名以上というのが、0名ないし1名の場合と比較してどのように自社のCGの向上に貢献できているのか)という観点から、有益な検討、議論がされることを望みます。


 
弁護士 出澤 秀二

2015年9月27日 (日)

閑話

連休続きで本格稼働がこれからという方も多いのではないかと思います。

そこで、今日は、主題を離れた趣味の話をいたしましょう。


 
私の趣味はオペラ鑑賞です。歌い手の絶唱が受容側の精神の波長とよく合うらしく、神経細胞が共鳴し、高揚感と痺れる感覚を得られるのです。誰でも、スポーツ観戦、読書などで全身に痺れる高揚感が走る体験をしたことがあると思いますが、私の場合は、それがオペラ鑑賞だったということのようです。


 
この1週間、延べ8作品ほど鑑賞しました。いくつかご紹介します。

まず、コルンゴルト(1897-1957)23歳の作品「死の都」(フィンランド国立歌劇場ライブのDVD)です。亡き妻マリーの幻影を常に抱きながら生活をしている主人公のパウルが、亡妻に瓜二つの劇団員の女性マリエッタに出会い、夢や幻想と現実を交錯させる物語です。主人公役は、フォークトというドイツのテノールですが、澄んだ高音が音楽の透明感に溶け込んで、陶酔感を抱けた作品でした。その一場面です。

https://www.youtube.com/watch?v=nAUpl8nLmqs


 
この演出は、昨年、新国立劇場でも公演(NHK BSで放映)されたものと同じですが(歌手、オーケストラは異なります。)、マリーの黙役が物語を一層表情豊かなものとしています(新国版の黙役の方が幻想の世界と、触れたら無くなりそうな脆さを巧みに表現していました。フィンランド版は、生命感が若干豊かに出すぎです。)。

http://www.nntt.jac.go.jp/opera/dietotestadt/


 
また、ヴェリズモオペラの典型である、マスカーニ(1863-1945)の「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、続けさまに3作品を見ました。この作品は、間奏曲が有名で、誰もが耳にしたことがあると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=LCVNHu3qtDo(カラヤン)


 
最初にホセ・クーラのチューリッヒ歌劇場ライブのBDをみたのですが、学芸会のような演出と感情表現が三文演劇的なプロダクションで、まるでブランデーの入っていない西洋菓子を生ぬるい紅茶と一緒に食べたような残念な後味だったため、口直しをしないといけないと、YouTubeを探してみました。


 
すると、面白そうな作品を2つ見つけました。アラーニャのオランジェ2009年とカウフマンのザルツブルグ2015年がアップされていたのです。この2人は、いずれも現代の人気テノールです。カヴァレリア・ルスティカーナは、上演時間が1時間10分程度で、一般的なオペラ作品が2時間半以上もあるのとは違って、気軽に見られるのが特徴です。続けて見ました。そして、よい口直しができました。やはり、オペラは、よい歌手と演出で見たいものです。

https://www.youtube.com/watch?v=jQuKUMNjQkM

https://www.youtube.com/watch?v=HAHxy68ZZU8

弁護士 出澤 秀二

2015年9月22日 (火)

監査等委員会設置会社(4)~監査等委員会規程

監査等委員会規程(「監査等委員会規定」「監査等委員会規則」の題名もあります。)の私案を掲載します。次の日本監査役協会の「ひな型」とは、仕組みが異なります。私案の方がすっきりしていると思うのですが、いかがでしょうか。

http://www.kansa.or.jp/support/library/regulations/post-138.html


                             監査等委員会規程

 第1条(目的)

 本規程は、法令及び定款の定めに基づき、監査等委員会に関する事項を定める。

 第2条(組織)

 1 監査等委員会は、全ての監査等委員である取締役(以下「監査等委員」という。)で組織する。

 2 監査等委員会は、委員長(以下「監査等委員長」という。)を選定する。

 3 監査等委員会は、常勤の監査等委員(以下「常勤監査等委員」という。)を選定する。

 第3条(職務・権限)

 1 監査等委員会は、次の職務その他法令及び定款に定める職務並びに監査等委員会が必要と認める職務を行う。

 ① 取締役の職務の執行の監査

② 監査報告の作成

③ 会計監査人の選任、解任及び不再任に関する議案の内容の決定

④ 監査等委員以外の取締役の選任、解任、辞任及び報酬等について、株主総会において陳述する意見の決定

⑤ 会社と監査等委員以外の取締役との間の利益相反取引の承認、不承認の決定

 2 監査等委員会は、前項の職務の遂行に関し、弁護士、公認会計士、税理士等の外部の専門家の意見を徴取することができる。この場合の費用は、会社の負担とする。

 第4条(会議の開催)

 監査等委員会は、原則として○か月に1回開催する。ただし、必要に応じて随時開催することができる。

 第5条(招集権者及び議長)

 1 監査等委員会は、監査等委員長が招集する。ただし、各監査等委員が招集することを妨げない。

 2 監査等委員会の議長は、監査等委員長がこれを務める。ただし、監査等委員が前項ただし書により招集したときは、その招集した監査等委員が監査等委員会の議長を務めることができる。

 3 前項にかかわらず、監査等委員会は、互選によりその議長を選定することができる。

 第6条(招集手続)

 1 監査等委員会の招集通知は、各監査等委員に対して会日の3日前までに発する。但し、緊急の場合には、この期間を短縮することができる。

  2 監査等委員の全員の同意があるときは、前項の招集手続を経ることなく監査等委員会を開催することができる。

 第7条(決議の方法)

 1 監査等委員会の決議は、議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その監査等委員の過半数をもって行う。

 2 前項の決議につき、特別の利害関係を有する監査等委員は、その決議に加わることができない。

 第8条(決議事項)

 監査等委員会は、次の事項を決議する。なお、法令又は定款で別段の定めがある場合を除き、監査等委員会がその職務に関し任意に行う決議を妨げない。

 ① 監査の基本方針、監査計画、監査等委員の職務分担に関する事項

 ② 監査基準の策定

 ③ 監査報告の内容

 ④ 株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容

 ⑤ 監査等委員でない取締役の選任、解任、辞任及び報酬等について株主総会で陳述する意見の決定

 ⑥ 取締役(監査等委員を除く)の利益相反取引の承認

 ⑦ 会社法第340条第1、第5項に基づく会計監査人の解任。ただし、この場合、監査等委員全員の同意を必要とするものとする。

 ⑧ その他法令、定款又は本規程で定める事項

 第9条(選定監査等委員)

 1 監査等委員会は、常任として、次の報告の徴収又は調査等を行う監査等委員(以下「常任選定監査等委員」という。)を選定する。この場合、常任選定監査等委員は、①及び②に関する事項について、監査等委員会の定める監査方針、監査計画その他の決議があるときは、これに従わなければならない。

 ① 会社の取締役、従業員に対する業務執行の報告徴収、業務及び財務の状況の調査

 ② 子会社に対する事業の報告徴収、業務・財務の状況の調査

 ③ 会計監査人に対する報告徴収

 2 監査等委員会が第8条⑤の意見を決定するときは、常任監査等委員が、その意見を株主総会で陳述する監査等委員として選定されたものとする。ただし、別の監査等委員を選定することを妨げない。

 3 監査等委員会は、必要があるときは、次の特定の事項を行う監査等委員(以下「特任選定監査等委員」という。)を選定する。この場合、特定選定監査等委員は、当該特定の事項について、その選定の決議に従わなければならない。

 ① 取締役会の招集

 ② 会社と監査等委員以外の取締役等との間の訴訟につき会社を代表すること

 ③ 第8条⑦の会計監査人の解任理由を株主総会において説明すること

 4 常任監査等委員及び特任監査等委員は、前3項の職務の遂行について、その経過及び結果を、遅滞なく監査等委員会に報告する。

 第10条(特定監査等委員)

 1 監査等委員会は、監査報告の授受等の次の職務を行う監査等委員(以下「特定監査等委員」という。)を指定する。

 ① 特定取締役から事業報告及びその附属明細書並びに計算関係書類の提供を受けること

 ② 会計監査人から会計監査報告の内容の通知を受けること、並びにこの通知の期限につき特定取締役及び会計監査人と同意をすること

 ③ 監査等委員会の作成した監査報告の内容を特定取締役及び会計監査人(会計関係書類に関するものに限る)に通知すること、及びこの通知の期限につき特定取締役と同意をすること

 2 特定監査等委員は、前項の書類の提供を受け、又は会計監査報告の内容の通知を受けたときは、他のすべての監査等委員にその内容を通知しなければならない。

 3 特定監査等委員に事故があるときは、いずれかの監査等委員が前2項の職務を行う。

 第11条(兼任)

 常勤監査等委員は、常任選定監査等委員及び特定監査等委員を兼ねるものとする。ただし、常勤監査等委員が欠けた場合又は事故がある場合はこの限りではない。

 第12条(同意事項等)

 1 監査等委員会の次の同意は、監査等委員会の決議による。

 ① 会計監査人の報酬等の決定に対する同意

 ② 監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出することについての同意

 ③ 監査等委員会を補助する使用人の人事に関する事項について会社が定める同意

 2 全ての監査等委員の同意を要する次の同意は、監査等委員会において、全員一致の決議により行うことができる。

 ① 監査等委員以外の取締役の損害賠償責任免除責任免除議案の総会提出への同意

 ② 監査等委員以外の取締役の損害賠償責任免除の定款変更案の総会提出への同意

 ③ 監査等委員以外の取締役の定款に基づく責任免除議案の取締役会への提出の同意

 ④ 非業務執行取締役役の責任限定契約定款変更案の総会提出への同意

 ⑤ 監査等委員以外の取締役が被告の代表訴訟に会社が補助参加することの同意

 3 監査等委員の報酬等は、監査等委員会において、協議によって定めることができる。

 第13条(協議)

 監査等委員は、次の権限の行使及び義務の履行その他必要があるときは、監査等委員会において協議を行う。ただし、各監査等委員の法律上の権限の行使及び義務の履行を妨げない。

 ① 取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令・定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときの取締役会に対する報告

 ② 取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類(電磁的記録を含む。)が、法令・定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときの株主総会に対する報告

 ③ 取締役の職務執行の差止請求

 ④ 監査等委員の選任、解任、辞任及び報酬等の株主総会における意見の陳述

 第14条(調査)

 1 監査等委員会は、取締役に対し監査等委員会の出席を要求し、監査等委員会が求めた事項について、説明を受けることができる。

 2 前項のほか、監査等委員会は、常任選定監査等委員を通じて、第9条第1項各号の調査又は報告の徴取を行い、必要に応じて、関係する者を監査等委員会に出席を求めることができる。

 第15条(監査等委員の監査等委員会に対する報告)

 1 監査等委員は、監査等委員会の職務の執行について、定期又は随時、監査等委員会に報告する。

 2 監査等委員は、取締役、従業員、会計監査人その他の者から報告を受け、又は書類を受領したときは、遅滞なく監査等委員会に報告する。

 第16条(監査報告の作成)

 1 監査等委員会は、監査報告の内容を決定し、これを作成する。

 2 監査報告の内容と異なる意見がある監査等委員は、その意見を監査報告に付記することができる。

 第17条(議事録)

 1 監査等委員会の議事録は、法令で定めるところにより、書面(電磁的記録を含む)をもって作成し、出席した監査等委員は、これに署名し、又は記名押印(電子署名を含む)する。

 2 議事録は、裁判所の許可を得た株主、債権者又は親会社社員でなければ閲覧又は謄写をすることができない。

 3 監査等委員会の議事録は、監査等委員会の日から10年間本店に備え置くものとする。

 第18条(事務局)

 監査等委員会の事務局は、監査等委員会の指示に従いその職務を補助し、監査等委員会の招集通知の発送、議事録の作成その他の事務手続きを行う。
 

 第19条(職務の執行についての費用請求)

 監査等委員は、職務の執行(監査等委員会の職務の執行に関するものに限る)について費用の前払を必要とし、又は支出(債務の負担を含む)したときは、会社に対しその定める手続きに従い請求をすることができる。

 第20条(監査基準)

 監査等委員会及び監査等委員の職務に関する事項は、法令、定款又は本規程に定める事項のほか、監査等委員会において定める監査等委員会監査基準による。

 第21条(本規程の改廃)

 本規程の改廃は、監査等委員会の決議による。


以上です。弁護士 出澤 秀二

 

2015年9月21日 (月)

監査等委員会設置会社の話(3)

今日は、監査等委員会の選定する監査等委員の権限を考えます。

「監査等委員会が選定する(した)監査等委員」は、会社法に10か所登場する。

監査等委員会は会議体なので、委員会としては、個別に委員を選定して委員会としての職務を遂行させる必要が生じる。すなわち、選定された監査等委員は、委員会から委嘱を受けた職務を委員会の意向に従って遂行する必要がある。

この選定の場合を実務的観点から大きく次の3つに分類することができる。

1.報告徴収・調査権の行使(3993ⅠⅡⅢ)

・会社の取締役・従業員に対する業務執行の報告徴収権、業務・財務の状況の調査権

・子会社に対する事業の報告徴収権、業務・財務の状況の調査権

これらは、監査等委員会の決議(監査方針、監査計画等)があるときは、これに従う。
 
・「監査等委員会が選定した監査等委員は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。」(397ⅡⅣ)は、「選定した委員」が「その職務遂行上必要な場合」であるので、基本的に、上記報告徴収・調査権に付随するものととらえることができよう。


 
これらは、従来の常勤監査役が主に担当していた機能といえよう。したがって、監査等委員会設置会社としても、常勤の監査等委員を選定して包括的に権限を付与することになろう。

2.株主総会における委員会の意見・理由の陳述・報告

・監査等委員以外の取締役の選任・解任・辞任に関する監査等委員会の意見を株主総会で述べる権限(3422Ⅳ)

・監査等委員以外の取締役の報酬等に関する監査等委員会の意見を株主総会で述べる権限(361Ⅵ)

・会計監査人の解任理由を株主総会において報告する義務(340ⅢⅤ)

これらは、株主総会における陳述者であるので、監査報告を決定する際に選定してもよいし、あらかじめ常勤の監査等委員を選定しておいてもよいであろう。

3.特殊な場合

・取締役会の招集権(3993ⅩⅣ)

・会社と監査等委員以外の取締役等との間の訴訟につき会社を代表する権限(39973か所)

これらの場合は、その必要が生じたときに委員会で協議をせざるを得ず、そのときに適任者を選定するのが望ましい。

公表されている監査等委員会規定には、上記すべての場合を一緒にしているものが見受けられますが、性質の違いを理解しておくべきでしょう。上記3の特殊な場合は、あらかじめ選定しておくような性質のものではありません。監査等委員会の意向にかかわらず、あらかじめ選定された監査等委員が「取締役会を招集」できるのは明らかに不都合です。


弁護士 出澤 秀二

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