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2015年10月21日 (水)

データ移転に関するEU・米国間のセーフハーバー協定無効判決

欧州司法裁判所(ECJ)は、2015106日、データ移転に関するEU・米国間のセーフハーバー協定が無効である旨の判決を下しました。

http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2015-10/cp150117en.pdf


EU
データ保護指令(95/46/EC)のもとでは、個人データのEU外の第三国への移転は、原則として、当該第三国において「十分なレベルの保護措置」が確保されている旨の欧州委員会による認定(十分性認定)がある場合に限って、行うことができます。そして、米国や日本はこの認定を受けていません。


 
他方で、EU・米国間では2000年に「セーフハーバー協定」が合意され、EUから米国へのデータ移転に関しては、特例措置が設けられています。これは、一定の原則を遵守する旨を表明し、米国商務省の認証を受けた企業については、データ移転について「十分なレベルの保護措置」が確保されているものと認める取扱いをするものです。これまで、FacebookGoogleなど多くの米国企業が、このセーフハーバースキームに依拠して、EU・米国間のデータ移転を行ってきました。


 
本判決の事案は、エドワード・スノーデン事件により、米国政府機関(NSA等)による企業等の情報監視の事実が発覚したことを受け、オーストリアのFacebookユーザーが、米国の保護措置の十分性に疑義があるとして、アイルランドの当局に申立てを行ったことを契機とするものです。


ECJ
は、米国の保護措置が不十分であると認め、結論として、EU・米国間のセーフハーバー協定は無効であると判断しました。

http://curia.europa.eu/juris/documents.jsf?num=C-362/14


 
本判決については、セーフハーバースキームに依拠してきた米国企業への重大な影響に鑑み、EU・米国間で早期に何らかの決着が図られる可能性もありますが、関係する企業、政府等が今後迫られる対応を考えると、本判決がもつインパクトは大きいと考えられます。現行のEUデータ保護指令に関しては、これに代わる新たな規制枠組みである「一般データ保護規則」の制定に向けた作業が現在進行中ですが、当該作業にも影響を及ぼす可能性があります。


 
日本との関係では、わが国でも、米国の例にならい、EUとの間で(日本版)セーフハーバー協定を締結してはどうかという意見がありますが、本判決によりその実現は困難になるかもしれません。先日出席した弁護士会のセミナーでも、そうした議論が出ていました。


 
日本では、20159月、改正個人情報保護法が成立しました。改正後の日本の法制度が今後EUの十分性認定を受けるか否かは、EU内で事業を展開する日本企業にとって重要な意味をもちます。この点に関する今後の動向にも注目しています。


 
弁護士 大賀祥大

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